いつかはランドクルーザー

トヨタ・カントリー

パプアニューギニアはトヨタ車天国です。統計的に新車販売の50%以上はトヨタ車ですが、実感としては8割、それくらいトヨタ信奉は強い感じがします。

例えばマイクロバスはコースターが、乗り合いバスとして全国で使われています。

ハイエースのバンがビジネスの現場で走り回り

個人ではハイラックスのピックアップ車や

RAV4のようなSUV車が好まれます。

なぜだかトラック系はカラッキシだめで、ダイナはほとんど見ません。トラック系ではイスズ、三菱やマツダが人気のようです。

そうして、ランドクルーザーです。

「いつかはクラウン」

若い世代には分からないでしょうが、日本ではかつて、『いつかはクラウン』という有名なキャッチコピーがありました。

いまは安月給でカローラなどの大衆車しか買えない自分だが、いつかは出世して、社会的地位を持ったクラウンを買えるようになりたい、と頑張った世代がいました。

もう言いたいことはお分かりですね。そう、パプアニューギニアでは、「いつかはランドクルーザー」なのです。

水陸両用のすごい奴

道のない村に掘削機が入ってようやく道路というものができた。でも舗装されていないので雨が降るとすぐにぐちゃぐちゃになって、車は通れなくなる。村に一台しかないピックアップトラックが泥濘でスタックして、10人がかりで必死で押すが、タイヤは深みにはまっていくばかりで抜け出せない。

そこへ、白人が運転する車が悪路をものともせずスイスイと横を通り抜けてゆく。車はもちろん、ランドクルーザーだ。

あるいは海辺の街では、道路は橋のない浅瀬を何度も超えてゆく。雨が降れば増水し、車高の低い車は立ち往生する。そこでも横をわがもの顔で通り抜けていくのはシュノーケルを備えたランドクルーザーだ。

ぼくも、私もあの車が欲しい。あこがれの的はもちろんクラウンではない。それは三菱パジェロでも、日産パトロール(サファリ)でも、英国のランドローバーでもなく、ランドクルーザーあるのみだ。

ディーラーの回し者か

パプアニューギニアでランドクルーザーを売っているのは豊田通商株式会社。れっきとした日本の商社だ。

でもトヨタ・ツーショーと言っても通じない。ここでは、エラ・モータースとして誰もが知るパプアニューギニア有数の企業だ。

エラモータースは新車販売だけでなく、整備、パーツ販売も行い、総合的にお客様をサポートするだけでなく、ラグビーチームを始めとするスポーツチームのスポンサーをしたり、国立高校の日本語教室に寄付もする、パプアニューギニアきっての優良企業です。

もちろん僕はエラモータースの回し者ではありませんし、依頼されて書いたわけではありませんが、それは間もなく判明します。

高嶺の花

ところが、エラモータースにいってみると、ランドクルーザー、高い!!

とても手が出ない。いや、だから高嶺の花なんだろう。

エラモータースの上客はパプアニューギニアで莫大な利益を上げる鉱山・石油資源会社や、政府高官、政治家。

パプアニューギニアの政治家が選挙で当選するやいなや、まず買うのはランドクルーザー。自分用に買って、嫁用に買って、息子用に買って、警備員用に買う。それで4台。もうちょっと金を引っ張ってきて選挙区用に1台か。しめて5千万円ほど。これで「いつかはランドクルーザー」の出世物語の完了。道路が整備されてランドクルーザーなど必要のないポートモレスビーで暑苦しい車列を連ねているのはたいていそういった成金政治家です。

うちもかつて仕事用にランドクルーザーを買ってみましたが、お客様(日本人)にはその価値は分かっていただけないようで、しかもその車はディーゼルではなくガソリン車で、8気筒で排気量4000cc、燃費が悪いわりに高く貸し出しすることが無理でしたので、結局手放してしまいました😿

非国民あつかいされて

あるとき、現地の人から4WD車を貸してほしい、と言われ、日産パトロールだよ、というと、怪訝な顔をされました。お前は日本人なのにランドクルーザーじゃないのか、と。いや、日産も日本車だよ、と説明したのですが、「非国民」のように扱われたのを覚えています。

「トヨタにあらずんば人にあらず」

「ランクルを持たない日本人は日本人じゃない」

いや、決してそういうわけではなく、パプアニューギニアに住んでいて、4WDがランクルじゃないなんて非国民だ、という、そういう意味ですね。

正直にいえば、ランクルを買う金がなかっただけの話なのです😢

パプアニューギニアのために作られた車だった?

かつて、独立前のパプアニューギニアを訪れたトヨタの技術者(エラモータースはパプアニューギニアの独立前から営業していました)が、険しい山や深い河を見て、こういうところを走る車を開発しなければいけない、として作ったのがランドクルーザーだ、という都市伝説がパプアニューギニアではまことしやかに語られています。

さすがにそれはエラモータースの駐在員の方に却下されました(笑)が、いまでも100系以降のタウン仕様車よりも、質実剛健な70型が売れるパプアニューギニアは、まさしく、ランドクルーザーのためにある、といえるでしょう。

(担当:上岡秀雄)

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