仮面の祭典、マスクフェスティバル(ラバウル)

(※このページは2025年2月に更新されました)

「パプアニューギニアってお祭りがいっぱいあるけど、どれがいいのか分からない」

「一生に一回なら、どのお祭りに行くべきか」

「どうせだったら一番インパクトがある部族の祭典に行ってみたい」

この記事はそんな方へ向けて書いています。

パプアニューギニアのお祭り5選  マスクフェスティバル

お祭りデータ

開催場所                    東ニューブリテン州、ラバウル(ココポ)

行き方                         ポートモレスビーより航空機で80分から

開催時期                    2025年7月9日(水)~11日(金)

(写真)タブルブル火山の麓、海水が火山熱で熱せられ変色している様子。

パプアニューギニアの文化庁と東ニューブリテン州が共催する国の無形文化フェスティバル。1995年にポートモレスビーで始まり、マダンを経由して第3回が東ニューブリテン・ラバウルで開催されて以来、東ニューブリテンで行われることが通例となっています。

ハイライトその1 トゥブアン

マスクフェスティバルの主役はなんといってもトーライの精霊、トゥブアンでしょう。キナバイの儀式ではトゥブアンたちがボートの上で踊り狂いーまさに狂う、という表現がぴったりですー海岸に上がってくるところがハイライトです。これは聖なる儀式ですので、偶然にあたらない限り観られませんが、フェスティバルでは気軽に見ることができます。

元々お隣のニューアイルランドの住民だったトーライは、海を越えてラバウルに移住してきた際、先住民を武力で追い出し、山の奥に追いやったのです。

この精霊には顔に円がぐるぐる描かれているものと、背が高く、無表情(のっぺらぼう)のものとがあり、前者はトゥブアン、後者はトゥブアンの息子でドゥクドゥクと呼ばれています。

キナバイでは、早朝に行われる海岸での儀式に続き、会場で「続き」を見ることができます。ここでは、しおらしく座るトゥブアンに向かい、村の長老らしき老人たちがタブと言われるシェルマネー(貝のお金)の束を、時速150キロの剛速球を投げ込むような勢いで思い切り叩きつけたり、(その時のトゥブアンの反応がまた面白いので、ぜひお見逃しなく!)、バナナの束を積み上げた台の周りをぐるぐる回ったり、珍しい儀式を見ることができます。何をやっているのかガイドに説明を求めたところ、そこまで仏様のような笑みの絶えなかった彼の顔が、突如として南極のブリザードに放り込まれたかのように凍り付き、「それだけは教えられない」と。ええええ? なにそれ??

トゥブアン・ドゥクドゥクの伝統を守るのは、イニシエーションを受けたトーライの成人男性だけが入会を許される「秘密結社」で、彼らは鉄の結束を誇ります。しかも、村人だけではなく、高等教育を受けた官僚、ビジネスマンや果ては総理大臣までが部族伝来の「秘密」をかたくなに守っているのです。伝統を守るのは素晴らしいことですが、しかめっ面した大の大人が、「秘密なんだ」って、家族に隠れてキッダルト向けの玩具で遊ぶ大人のようでちょっと微笑ましいじゃないですか。

ツアーガイドもトーライなので、知っているけど教えられない、と言うことだったのです。そういわれたらもっと知りたくなりますよね。でも、少し視点を変えれば、本来は部外秘の聖なる儀式を見させてもらっているだけでも、幸せなのかもしれません。

実は、知人の日本人で結社に入会している人がいて、儀式のことを知っている、というので聞いてみたところ、「そ、そ、それだけは教えられません」って。やっぱりダメでした(笑)

キナバイは通常は水曜日の早朝から行われますので、遅くとも火曜日にはラバウル入りしたいところです。航空機の遅延などのリスクを考えますと月曜日までに入る行程をお勧めします。 

太平洋戦争中に漫画家の水木しげるさんがラバウルに駐屯したのは有名な話ですが、その時に見たトゥブアンの精霊を、日本の伝統的な妖怪のモチーフと合体させ、一本足の「からかさお化け」を創り出したと言われています。幽霊は怖いものですが、そこはかとなくユーモアがあふれているのは水木先生のラバウルへの愛着からくるのでしょうか?

マスクフェスティバルではキナバイの他に、こんな部族やあんな部族も見れます(参加部族は年によって異なりますのであくまで実績です

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ハイライトその2 バイニング

もう一つ、見逃してはいけないのがバイニングの火祭りです。

勇壮な男たちが日の中に飛び込んでいくのはド迫力!!

ケガをしないのか、火傷しないのか心配になってしまいますね。

このバイニング、ラバウルから遠く離れた山奥にひっそりと暮らしているんです、というと、思い出しませんか、トーライに追いやられた先住民。そう、かれらこそがその部族なのです。トーライは彼らの部族名を変え、「山奥の住人」=バイニングという名前をつけたのです。

近年は一部のバイニングが政府に対し、呼称を変えるように要望を出していますが、いまだにバイニングという呼び名が一般的となっています。 

一説によりますと、火祭りは、火山の町ラバウルで何度も噴火被害にあったバイニングが、火をコントロールしたい、という願いから始まったと言われています。

マスクフェスティバルの時期には、ホテルなどが共同で火祭りを開催し、バイニングの村まで送迎付きでツアーとして発売しています。通常は2日目の夜、木曜日に行われますが、ココポに帰ってくると午後10時を回ることもあり、レストランは閉まってしまいますので、この日は予め夕食の予約をしてから出かけることをお勧めいたします。

(村では蝙蝠の燻製くらいしか食べられません😢)

マスクフェスティバル以外のおすすめスポット

お祭り以外では太平洋戦争の戦跡観光もできますし、パプアニューギニアの中では非常に安全な街ですので、マーケットなど独り歩きできるのが魅力です。

1.山本バンカー

正式名称を南東方面艦隊前線指揮所跡、と言いますが、昭和18年4月、山本五十六大将がブイン上空で撃墜される前日に訪れたことで、戦後、山本バンカーと呼ばれています。

バンカーの向かいには、かつての社交クラブ「ニューギニアクラブ」の建物が残っており、現在はラバウル歴史協会が管理する近代史博物館として、ドイツ植民地時代、2度の大戦などの写真や遺物などが展示されており、一見の価値ありです。

2.大発洞窟

写真はダイハツです。と言っても自動車メーカーではありません。ココポからラバウルの海岸沿いから少し内陸部に入った崖の下に、人工的に掘られた洞窟があります。ここには、旧日本陸軍の上陸用舟艇「大発動艇」(ダイハツドウテイ)=通称ダイハツ、が戦後80年を経た今も眠っています。戦時中は、海岸からレールを敷いて格納し、連合軍の空爆に備えたのです。

洞窟の中には5艘のダイハツが直列に格納されています。一番前の艇はかなり風化が進んでいますが、明かりが届いて見やすく、逆に奥に行くほど保存状態は良くなりますが、暗くてよく見ることができません。世界的にもこれほど完全な形を残したダイハツが現存するのは珍しいということです。

戦争や戦跡に興味がなくとも、ラバウルを訪れる際には必見のサイトです。

入場するには複数の地主に支払い、時に交渉も必要になってきますので、ツアーの一環でガイドと一緒に行くのが便利でしょう。

3.ココポマーケット

ココポの町中にある青空市場。新鮮な野菜や、ラバウルマンゴーと呼ばれる美味しいマンゴ、パパイヤ、ランブータン(ライチに似ていますが毛が生えています)や頬が落ちるほど甘いバナナなどの果物の他、現地でしか通用しない貝のお金、「タブ」といわれるシェルマネーを購入することもできます。少し買い物をするなど配慮をすると、気持ちよく撮らせてもらえますよ。小銭の用意を忘れずに。

マスクフェスティバルに便利なホテル

ラポポプランテーション                   空港近くの海に面するホテル。プールがあり快適。

ラバウルホテル                    噴火前からラバウル市内で営業する老舗のホテル。

タクラム・ロッジ                              ココポでのバジェット宿。中華料理がおいしい。

ココポビーチバンガロー ココポにあるホテル、ツアーに便利。プールもある。

マスクフェスティバルを訪れるツアー

みなさんも今年こそはぜひマスクフェスティバルを訪れるツアーに予約されてはいかがでしょうか?

監修:小坂恵敬氏

トーライの研究で現地に長く滞在、オーストラリア国立大学(ANU)でPHD取得

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