諸星大二郎「マッドメン」の世界とコドワ(akaアポさん)の里帰り

諸星大二郎「マッドメン」の世界とコドワ(akaアポさん)の里帰り

1975年から「月刊少年チャンピオン」上に発表され、いまや伝説となった、諸星大二郎先生による人気漫画「マッドメン」。

パプアニューギニアの高地、ゴロカの泥仮面「マッドメン」がタイトルの由来ですが、漫画にはセピック地方の精霊の家や、海岸沿いの部族のタトゥー、ニューブリテン島のバイニングまで複雑な文化が交じり合った、パプアニューギニアのオールスター勢ぞろい、と言ってもよいでしょう。野球でいうなら、長嶋茂雄、王貞治、落合博満、野茂英雄、イチロー、松井秀喜に大谷翔平が勢ぞろいするようなもの。(つまりありえない組み合わせ、ということなのですが)

ゴロカのアサロ・マッドメン

セピック地方のダンシングマスク

ニューブリテン島のバイニング

フィクションと知りながら、あえてガワン族の本拠地を探すなら、セピック川の上流地域とハイランドが交わる奥地でしょうか?

諸星大二郎という天才漫画家

そんな私ですが、な、な、なんと、2014年に諸星先生とセピック川に同行取材をする機会を得ました。

それまで、「マッドメン」を描かれる前に現地取材をされたと思っていたのですが、すべて資料と想像で描いた、と聞き、驚きました。

ミドルセピックの村を訪れ、ウェワクへの帰路にマプリック地方の精霊の家を訪れたときです。「マッドメン」に描かれた精霊の家と全く瓜二つの三角屋根の建物が目の前にあるではないですか!!

形はもちろん、色までそっくりです。これを想像で描いたとはとても信じられませんでした。

先生はその場で鉛筆を使い、さらさらとスケッチを始めると、あっという間に精霊の家のスケッチを完成させてしまいました。目の前の精霊の家そのものがあっという間に完成!

大先生に対して素人が失礼とは思いながら、「う、う、う、う、巧い」、と感嘆の声を上げたのを覚えています。

その精巧なスケッチは、河出書房新社のムック

諸星大二郎 マッドメンの世界」でご覧いただけます。

https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309978581

余談ですが、空港で待っている間に先生にスケッチされたようで、気が付いたら私も『追跡ルポ 波子を探して』のモデルになっていました。先生、抜け目がない(笑)

<コドワはどこの部族の人間か?>

コドワのコスチュームを分析すると、まずオレンジ色のゴクラクチョウの羽根飾りが目立ちます。

ゴクラクチョウはパプアニューギニア38種生息しており、それぞれ異なる特徴を持っているのですが、オレンジ色の飾り羽を持っているのは低地に生息するアカカザリフウチョウ(およびオオフウチョウ)となり、マッドメンの本拠地である高地のものではありません。

    アカカザリフウチョウ

アカカザリフウチョウの羽根を使ったヘッドドレス

一方、首にぶら下げている大きな半月形の貝は、キナ貝といい、海がない=貝が取れないハイランド地方で重宝され、物々交換に用いられたり、結婚式の結納に使われた伝統的な通貨で、この貝の名前が現在のパプアニューギニアの通貨、キナの元になっています。

キナ貝をまとうハイランドの男性

コドワが手にしている盾にはセピック地方に特有のデザインが使われています。

セピック地方の木彫りの仮面

また、体中に施されたタトゥーは、首都ポートモレスビーの先住民族であるモツや、セントラル州メケオ、オロ州のトゥフィの人々などを彷彿させます。

          メケオの男性

             オロ州の伝統的なタトゥー

これらから、コドワは「マッドメン」、という伝説化した漫画の世界にのみ住んでいる、といえるでしょう。

<日本に住んでいるコドワ>

そんなマッドメンの世界ですが、実は、現在の日本に、マッドメンのコドワさながらのコスチュームをまとう人が居るのです。知る人ぞ知る、アポさん、という方です。

アポさんは、バックパッカーとしてパプアニューギニアのゴロカにたどり着き、ファニウファという村で滞在していた時、村人たちが急に伝統的な衣装を着だしたので、何が始まるんだ、と聞いたところ、これから大きなお祭りに出るんだ、お前も出てみないか、と言われ、一緒に出場したのが縁で、毎年ゴロカに通うことになったそうです。

私は、2004年にゴロカショーを訪れた際、民族衣装を身にまとった部族から「こんにちわ」と声をかけられて、気絶しそうになったのですが、それがアポさんとの出会いでした。

凛々しいアポさん@ゴロカショー

アポさんはそのうちに、パプアニューギニア好きが高じて、青梅にパプアニューギニアのカフェを開いてしまった、という奇特な、現代のコドワなのです。

ただし、「カフェ・にうぎに」は、店主の衣装とは正反対で、おちゃらけた店ではなく、世界的に有名なニューギニアコーヒーや、ニューギニア伝統料理のムームーの他、本格的な手打ちそばやエスニックカレーが食べられます。完全予約制ですが、興味のある方は一度訪れてみてください。マッドマンなどレアもの好きの方だけでなく、グルメの方もきっと満足するはずです。

そんなアポさんですが、お客様がそろえば、なんと、マッドメンの仮面を携え、コドワのなりをしたまま、セピック川へ乗り込む、というではありませんか!!

ついに里帰りするコドワ、いったいどうなるのでしょうか???

https://png-japan.co.jp/search_detail.html?KEY=1737944779ツアーはこちらから

ツアー詳細は、続編をお待ちください!!

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